chapter1520:北西への道

画像日曜洋画劇場、1967年4月分の放映リスト。
放送が日曜日に移動して番組名も「日曜洋画劇場」になりました。

4月9日「誇りと情熱」(1957)
 監督:スタンリー・クレイマー、出演:ケイリー・グラント
4月16日「縛り首の木」(1959)
 監督:デルマー・デイヴィス、出演:ゲイリー・クーパー
4月23日「太陽に向って走れ」(1956)
 監督:ロイ・ボールティング、出演:リチャード・ウィドマーク
4月30日「北西への道」(1940)
 監督:キング・ヴィダー、出演:スペンサー・トレイシー

DVD発売されているのは「誇りと情熱」と「北西への道」の2本。
「誇りと情熱」は以前にテレビで見た気がするので、パブリック・ドメイン版の「北西への道」にしました。


北西への道(1940)
NORTHWEST PASSAGE
監督:キング・ヴィダー
出演:スペンサー・トレイシー、ロバート・ヤング、ウォルター・ブレナン


アメリカがイギリスから独立する以前の1759年。
学長を風刺した絵を描いたためハーバード大学を放校処分になったラングドン(ヤング)が故郷のポーツマスへ帰ってきます。
両親はガッカリしましたが、彼が得意な絵の道を目指して画家になりたいと告げると喜んでくれました。
続いて恋人のエリザベス(ルース・ハッセイ)に報告しに行きますが、画家に娘はやれないと彼女の両親に反対されます。
ヤケになったラングドンは友人と酒場へ。
酔ってきたラングドンはエスカレートしてポーツマスの総督批判をして、隣にいた政府の役人に聞かれてしまいます。
当時は公に政治批判が出来ない時代。
ラングドンは処分を逃れるためにハンク(ブレナン)と町を出ることにします。
山中の酒場に休憩しようと入ってみたところ、中にいたレンジャーズのロジャース少佐(トレイシー)と意気投合。
半ば無理やりにロジャース少佐のレンジャーズに入れられてしまうのですが…。

独立戦争直前の“フレンチ・インディアン戦争”時代のアメリカを舞台にした名匠キング・ヴィダー監督作。
アメリカ独立戦争の映画は多いと思いますが、この時代を扱った映画は珍しいのではないでしょうか。

ヨーロッパで発生した“七年戦争”の煽りを受けて、まだイギリスの植民地だったアメリカで勃発したのがこの戦争。
フランスがアメリカ先住民のインディアンたちと同盟を結んで戦ったため、“フレンチ・インディアン戦争”と呼ばれています。
もっともインディアンの中にはイギリス側についた部族もあるようで、劇中ではアパッチ族がレンジャーズの道案内と斥候をしていました。
ちなみに10数年後に始まる独立戦争では、アメリカがフランスの支援を受けてイギリスと戦うのですから、歴史は面白いですね (^^;;

さて、ロジャース少佐が率いるレンジャーズですが正規軍ではありません。
遊撃隊というか、自警隊というか、討伐隊というか…総勢200名ほどからなる部隊。
軍服ではなく、西部劇で見るダニエル・ブーンやデイヴィー・クロケットのような革の服を着ています。
兵士の出身地もバラバラの寄せ集めで、統率が取れているとは言い難い集団です。

彼らはニューヨークを出発し、カナダとの国境を流れるセントローレンス川まで北上。
その近くにあるフランス側についたインディアンの部落を焼き払うことが目的です。
インディアンに家族や肉親を殺された人が復讐のためにレンジャーズに参加していたりするのですが、この部族を討伐するシーンが見せ場の1つ。
劇中のインディアンは未開の残忍な集団として描かれていますし、レンジャーズの兵士たちも何のためらいもなく彼らを殺しています。
まあ、これは古い映画なので仕方ないでしょうね。

一方的な白人の視点で描いた作品(特に西部劇に多いのですが)を全く評価しない人がいますが、価値観、歴史観、倫理観などは時代で変わるもの。
それを現在の基準で評価することは個人的に反対です。
例えば、太平洋戦争中の日本軍は鬼畜のように描かれることもありますが、戦争相手なのですから、これは当然のことだと思うのです。
あまり見ていて良い気分にはなりませんが、それと映画としての評価は別だと考えます。

白人VSインディアンが主眼の作品ではなく、“北西への道”と呼ばれた北アメリカを横断して太平洋岸へ抜けるルートを探す男たちの物語でしょう。
ルイス・クラーク探検隊によって実際に“北西への道”が発見されるのは、この時代から約半世紀後の1805年でした。

自分の評価は★★★。
インディアン討伐からの帰路、あちこちで待ち受けるフランス軍に追われて、満足な食事もできず逃げ惑うレンジャーズはかなり悲惨です。
疲労と空腹で気が狂ってしまう兵士も出てしまうほど。
彼らをなだめすかしながら、時には三国志の曹操が用いた“梅林”のエピソードに似た手法を使って鼓舞するロジャース少佐をスペンサー・トレイシーが好演。
コメディ・リリーフ的なウォルター・ブレナンも良い味を出しています。

劇中には『北西への道を探して日本へ辿り着く』という意味のセリフが何度か登場します。
これは自分の深読みかも知れませんが、真珠湾攻撃の前年に作られた映画ということを考えると、戦意高揚的なものもあったのかも知れません。

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