chapter2564:天使が隣で眠る夜

画像天使が隣で眠る夜(1994)
REGARDE LES HOMMES TOMBER
監督:ジャック・オーディアール
出演:ジャン・ルイ・トランティニャン、ジャン・ヤンヌ、マチュー・カソヴィッツ


シモン(ヤンヌ)は老境に差しかかったうだつの上がらない印刷機のセールスマン。
ある日、若手刑事のミッキー(イヴォン・バック)から相棒の刑事がケガで入院してしまったので、囮捜査を手伝って欲しいと頼まれます。
シモンは断ったものの、車の中で見張っているだけでいいからと説得されて渋々引き受けることに。
ところが、ミッキーは銃で撃たれて意識不明の重体になってしまいます。
暇を見つけては病室を訪れ、昏睡状態のミッキーに話し掛けるシモン。
ミッキーを撃った犯人の捜査が進まないことに業を煮やした彼は独自の調査を始めるのでした。
その約1年前、老いぼれギャンブラーのマルクス(トランティニャン)はヒッチハイク中にフレデリック(カソヴィッツ)という若者と知り合います。
ちょっと頭が足りないフレデリックを鬱陶しく思いながらもマルクスは一緒に連れ歩くのですが…。

アメリカの女流ミステリー作家、テリー・ホワイトの「真夜中の相棒」を映画化したフランス映画。
脚本家だったジャック・オーディアールが監督デビューした犯罪ドラマです。
この年のセザール賞でオーディアールが新人監督作品賞、マチュー・カソヴィッツが有望若手男優賞を受賞しています。
ちなみにジャック・オーディアールは「地下室のメロディー」などの脚本家ミシェル・オーディアールの息子です。

この映画は2つの物語から構成されています。
1つ目は刑事を撃った犯人を追うセールスマンの現在進行形の物語。
もう1つは偶然に知り合った老ギャンブラーと失業中の若者による約1年前の過去の物語です。
この2つの時間軸が交互に描写され、しかも過去の物語が少しずつ現在の物語に追いついてくるという複雑な構成になっています。
それでも、見ていて全く混乱しないのは脚本の構成力と的確な編集のお陰でしょう。

かたや、犯人を追うと言っても所詮は組織力も資金もない素人探偵。
颯爽とした格好良さとは無縁で、長年連れ添った妻や仕事を犠牲にして執念で調査を続けるしかありません。
こなた、社会の底辺を生きる老人と若者のコンビ。
こちらは特に目的もなく各地を放浪するロードムービー風に描かれています。
無関係のように思えるこの2つの物語がどう交差するのか…という興味で中盤まではグイグイ引っ張られました。

途中で2組の関係に察しがつくようになるのですが、そこからが本作の見せ場。
それとなく張られていた伏線を回収して意外なラストへ向かいます。

自分の評価は★★★★のお薦め。
頭の弱いホモの青年を演じたマチュー・カソヴィッツの演技が絶品です。
まるで叱りつけても人なつっこく尻尾を振ってついてくるバカ犬のよう。
ロートル2人を演じたトランティニャンとジャン・ヤンヌの“老い”の醜さと残酷さの演技も流石です。
ジャック・オーディアール監督はときおり見られるヌーベルバーグぽい演出なども見事で、これが初メガホンとは思えないほど。
犯罪ミステリーとしても人間ドラマとしても見応え充分な作品でした。

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