chapter2504:探偵物語(1951)

画像探偵物語(1951)
DETECTIVE STORY
監督:ウィリアム・ワイラー
出演:カーク・ダグラス、エリノア・パーカー、ウィリアム・ベンディックス


舞台はニューヨークの21分署。
弁護士のシムズ(ワーナー・アンダーソン)がモナハン分署長(ホレイス・マクマホン)を訪ねてきます。
彼は依頼人である手配中の容疑者シュナイダー医師(ジョージ・マクレディ)を出頭させるにあたって条件を提示。
それは事件担当のジム・マクラウド刑事(ダグラス)が依頼人に暴力を振るわないというもの。
彼は優秀な刑事ですが、正義感が強すぎるため暴走しがちだったのです。
そこへジムが勤め先の金を横領した青年アーサー(クレイグ・ヒル)を署へ連行してきます。
刑事部屋へ戻ったジムは分署長に呼ばれ、シムズ弁護士の条件を守るよう釘を刺されるのでした。
やがて堕胎医師のシュナイダーがシムズ弁護士に連れられて署へ出頭してきます。
ところが、アテにしていた証人の夫人(グラディス・ジョージ)が証言を翻してシュナイダーを知らないと言い出します。
そこでシュナイダーに堕胎手術を受けて入院している被害者と直接会わせることに。
しかし、病院へ向かう途中で被害者が亡くなったという連絡が入ってきます。
証人がいなくなり勝ち誇ったようなシュナイダーを見たジムは思わず暴行。
骨折したシュナイダーは病院へ運ばれる際に事件とジムの妻メアリー(パーカー)の関連をほのめかすのですが…。

ブロードウェイでヒットしたシドニー・キングスレーの舞台劇をウィリアム・ワイラー監督が映画化した刑事ドラマ。
この年のアカデミー賞では主演女優賞(エリノア・パーカー)、助演女優賞(リー・グラント)、監督賞、脚色賞の4部門にノミネートされています。
他にもウィリアム・ベンディックス、キャシー・オドネル、ジョセフ・ワイズマン、クレイグ・ヒルと渋い脇役が揃っています。
ちなみにリー・グラントとジョセフ・ワイズマンはこれが本格的な映画デビュー作のようです。

ところで邦題は「探偵物語」となっていますが、主人公は刑事ですし劇中に探偵は1人も出てきません。
原題の“DETECTIVE”には“探偵”以外に“刑事”という意味もあるので、これは明らかな誤訳です。
と言うか、この邦題をつけた人は映画を見ていなかったのでしょうか (・_・?)

映画を見始めてすぐに感じたのは自分の愛読書であるエド・マクベインの「87分署シリーズ」にソックリな雰囲気だということ。
メインの堕胎医の事件以外にも万引事件、横領事件、強盗事件など色んな犯罪の犯人と刑事のやり取りが描かれています。
『隣人が原爆を作って私を殺そうとしている』と訴える電波系の夫人が出てきたりしますが、「87分署シリーズ」にも同じような描写が度々出てきました。
カーク・ダグラスとエリノア・パーカー夫婦の話が中心ですが、同僚の刑事やしょっ引かれた犯人たちにもスポットが当てられているので群像劇とも言えるでしょう。

原作が舞台劇ということで、映画はほぼ21分署内で進行します。
得てしてこういう限定された舞台の映画は変化に乏しく飽きてしまいがち。
しかもこの映画の音楽はオープニングとエンディングで使われているだけです。
ところが、素晴らしいワイラー監督の演出で全く退屈しませんでした。

パンフォーカスを多用して画面の手前と奥で演技をさせているので、モノクロのスタンダード・サイズの画面でも奥行きが感じられるのです。
それでいて、しっかり刑事部屋の狭さも表現できているのはお見事。
固定カメラで撮られたシーンがほとんどなのに流れるように物語が紡がれていきます。

自分の評価は★★★★★。
ユーモラスなシーンを挿入してメリハリをつけるタイミングや会話のセンスは抜群ですし、伏線の張り方もバッチリです。
まるで『密室劇はこう撮れ』とワイラーがお手本を示したかのような映画。
傑作です。

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