chapter2393:ボクサー(1970)

画像ボクサー(1970)
THE GREAT WHITE HOPE
監督:マーティン・リット
出演:ジェームズ・アール・ジョーンズ、ジェーン・アレクサンダー、ルー・ギルバート


1910年、アメリカの黒人ボクサー、ジャック・ジェファーソン(ジョーンズ)はオーストラリアで白人のチャンピオンに挑戦。
黒人初のヘビー級チャンピオンになったため、アメリカ国内は大騒ぎになります。
そこで白人のプロモーターや新聞記者は引退した元チャンピオンのブレイディ(ラリー・ペンネル)を担ぎ出すことに。
ジャックが船でサンフランシスコへ帰国する日に合わせてブレイディの挑戦を発表します。
その頃、帰国の船でジャックは白人女性エレノア(アレクサンダー)と知り合い、サンフランシスコに到着した時にはお互いを婚約者と考えるほどの仲になっていました。
2人の仲を秘密にすることはないと息巻くジャックをマネージャーのゴールディ(ギルバート)が抑えて、記者会見が始まります。
その様子をエレノアは遠目で見ていましたが、会見中にジャックの別れた黒人の恋人クララ(マーリーン・ウォーフィールド)が乱入。
たちまちジャックとエレノアの仲は新聞記者たちの知るところとなるものの、ゴールディの必死の懇願で記事にはしないことでその場は収まるのでした。
その後、独立記念日にリノで行われたブレイディ戦にもジャックは快勝して意気揚々とシカゴへ凱旋。
しかし、新聞記者たちから聞いたエレノアとの関係を検事のディクソン(ロバート・ウェッバー)たちが問題にし始めるのですが…。

オフ・ブロードウェイでヒットした舞台劇をマーティン・リット監督が映画化。
ジェームズ・アール・ジョーンズ、ジェーン・アレクサンダーと脚本のハワード・サックラーは舞台からの続投のようです。
主役の2人はこの年のアカデミー賞にもノミネートされました。

冒頭に『この映画の大部分は真実である』というテロップが出ますが、主人公のジャック・ジェファーソンは実在したジャック・ジョンソンであることは明らかです。
なので本作を“黒人で初めてボクシングのヘビー級チャンピオンとなったジャック・ジョンソンの伝記映画”と言って差し支えないでしょう。
原題の「THE GREAT WHITE HOPE」とは“大いなる白人の希望”として、ジョンソンと対戦した白人ボクサーたちのことです。

映画は洒落たオープニング・クレジットで始まります。
キャストやスタッフの名前がクレジットされるのは画面の下半分だけで、残る上半分にはボクシングをしている白人と黒人の足元が映っています。
やがてKOされた白人がマットに沈むとオープニングも終了。
ここで主人公が世界チャンピオンになったことを表現してから、元チャンピオンのブレイディが“THE GREAT WHITE HOPE”として復活を宣言するシーンに繋げているのは鮮やかです。

ボクシング映画なのにほとんどボクシング・シーンが出てこないのは、原作が舞台劇だからでしょう。
ジムで練習するシーンや試合前の控室が映るのでボクシング映画らしさは保たれていますが、ちょっぴり不満が残るのも確か。
それを一気に解消するかのように、ボクシング・シーンをタップリとクライマックスに用意した構成も上手いと思います。

中盤で主人公は史実通り、売春婦が複数の州にまたがって働くことを禁じた法律“マン法”を拡大解釈されて有罪になります。
ここからは一気にボクシング映画らしくなくなるのですが、ジェームズ・アール・ジョーンズの好演もあって退屈しません。
むしろここからが役者としての見せ場と言えるでしょう。
演技だけでなく、ちゃんとボクサーらしい筋肉と体格になっているのもお見事。
もっともベイダー卿と同じあの声を聞いているだけで、個人的には満足なのですけど (^^;;

時期的にブラック・プロイテーション映画の1本と思われそうですが、どちらかと言えばアメリカン・ニューシネマに近い雰囲気を持った作品。
“強すぎる黒人”という理由で社会的に抹殺される主人公をマーティン・リット監督は冷静なタッチで描いています。
ジャック・ジェファーソンはステレオタイプとして描かれていませんし、人種差別を白人側だけの問題としていない描き方はスパイク・リー作品を思い起こさせます。
社会派ドラマとしてもボクシング映画としても見応えのある秀作。
自分の評価も★★★★のお薦めです。

ちなみに後に“コットン・クラブ”と改名されて有名になるナイトクラブを建てたのもジャック・ジョンソンです。
劇中でも故郷のシカゴへ戻ったシーンで登場していました。

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